その求人、本当に採用できますか?

公開:2026.10.19 • 更新:2026.10.19 • 執筆者:XAION DATA編集部

 

<この記事でわかること>

  • 現行の採用活動の限界
  • 「事前設計型」への転換
  • 要件定義の共創
  • 市場を見る3つの視点:「Potential(市場性)」「Advantage(競争力)」「Account(ターゲット企業)」

Index

「このポジション、できれば3か月以内に採用したいです。」

新しい事業やプロジェクトが立ち上がると、こんな会話から採用が始まることがあります。現場から必要な人材像をヒアリングし、採用担当者が要件を整理する。業界経験は必要か、何年以上の経験を求めるか、どのようなスキルが必要か、年収はいくらにするか。議論が終われば求人票を作り、エージェントに共有し、求人媒体に掲載し、ダイレクトリクルーティングを開始します。ごく一般的な採用プロセスです。


ところが、採用を始めて1か月ほど経つと、少しずつ想定とのズレが見え始めます。エージェントから思ったほど推薦が来ない。スカウトを送っても返信率が上がらない。ようやく会えた候補者から、年収や働き方を理由に辞退される。そこで採用担当者と現場がもう一度集まり、条件の見直しが始まります。

業界経験をMustからWantにした方がよいのではないか。経験年数を少し下げた方がよいのではないか。年収レンジを見直した方がよいのではないか。ターゲット企業を広げた方がよいのではないか。

求人票を書き換え、エージェントに改めて説明し、スカウトの検索条件も変更する。気づけば、採用開始から2か月、3か月と時間が経っています。


ここで、一つ疑問が生まれます。この求人が採用しづらいということを、求人を出す前に知ることはできなかったのでしょうか。
今回考えたいのは、求人票の書き方やスカウト文面のテクニックではありません。もう少し手前にある、採用戦略そのものの設計についてです。私たちは、これからの採用では一つ大きく変えていくべきことがあると考えています。それは、求人を出してから採用市場を見るのではなく、採用市場を見てから求人を設計することです。

経験則だけでは、採用は読めない

もちろん、採用担当者には経験があります。これまでどのような求人が採用しやすかったのか、どの職種が難しかったのか、どの程度の年収なら候補者が集まりやすかったのか。人材紹介会社にも、現場責任者にも、それぞれの経験があります。こうした経験は、採用を進めるうえで非常に重要です。
一方で、経験には個人差があります。同じ求人を見ても、ある人はこの条件でも採用できると考え、別の人はかなり難しいと考えることがあります。どちらかが間違っているわけではありません。これまで経験してきた企業、職種、採用人数、報酬水準、採用チャネルなどが違えば、判断も変わります。


すると、要件を決める会議で少し不思議なことが起こります。現場は過去の成功体験からこの条件はMustにしたいと考え、採用担当者は自分の経験からその条件では難しいと感じる。エージェントは最近の候補者動向から別の条件変更を提案する。それぞれに根拠はありますが、その根拠がそれぞれの頭の中にあるため、最終的には誰の経験を優先するのかという議論になりがちです。


本来必要なのは、経験をなくすことではありません。経験に、現在の採用市場という共通の事実を加えることです。
現場には、事業や仕事についての深い知見があります。採用担当者には、候補者や採用活動についての経験があります。そこに外部の採用市場データを加える。この3つを組み合わせることで、採用要件についてより客観的で、納得感のある議論ができるようになります。

「まず動く」が、採用を遅くする

採用市場と比較しながら要件を検証できない場合、実務としてはまず採用活動を始めてみることになります。求人を公開し、エージェントに依頼し、スカウトを送る。その反応を見ながら、採用できそうかどうかを判断していきます。
応募が来なければ条件を見直す。エージェントから推薦が来なければターゲットを変える。スカウトの返信が少なければ検索条件や訴求内容を変える。候補者から辞退理由を聞き、競合との違いを少しずつ理解していく

もちろん、これは採用活動として必要なプロセスですし、実際に候補者と向き合わなければ分からないこともあります。


ただ、別の見方をすると、採用活動そのものが市場調査になっているとも言えます。求人を出してみないと採用できるか分からない。だから出してみる。反応が悪ければ原因を探し、条件を変えてもう一度市場へ出す。このサイクルを繰り返すほど、採用リードタイムは長くなります。


求人公開から数週間経って初めて母集団が少ないと分かり、さらに数週間経って条件変更を決め、求人票を修正して再び募集する。採用開始前に確認できたはずのことまで、実際の採用活動を使って検証しているとすれば、その分だけ時間を使っていることになります。
採用市場データの価値は、単に多くの数字を見られることではありません。採用開始後に分かっていたことの一部を、採用開始前に持ってくることができる。 ここに大きな意味があります。

その求人の難易度、説明できますか?

冒頭の採用案件に戻ります。現場からは、3か月以内に採用してほしいと言われています。現場から見れば、人が足りないことは事業上の問題です。新しい事業を始めたいのに責任者がいない。開発を加速したいのにエンジニアが足りない。営業組織を拡大したいのにマネージャーがいない。できるだけ早く採用してほしいという要望が出るのは当然です。


一方で、採用側からすると、求人によって難易度は大きく異なります。同じ1名採用でも、候補者が多く存在するポジションと、条件を満たす人が極端に少ないポジションでは、当然ながら戦い方も採用期間も変わります。


ところが、この違いを定量的に把握できていない場合、採用担当者は3か月程度を想定しています、と過去の経験から答えるしかありません。では、なぜ3か月なのでしょうか。2か月に短縮するには何を変えればよいのでしょうか。現在の条件を維持した場合、本当に3か月で採用できるのでしょうか。それとも半年を見た方がよいのでしょうか。
市場が見えていなければ、こうした問いに根拠を持って答えるのは簡単ではありません。

現在の条件では対象市場が非常に小さいことが分かっていれば、会話は変わります。採用スピードを優先するなら一部の条件をWantへ変更する。条件を維持するなら、採用期間を長めに設定する。あるいは、報酬や働き方そのものを見直す。採用担当者が感覚的に難しいと伝えるのではなく、現場と同じ事実を見ながら選択肢を議論できるようになります。


つまり、採用市場データは分析のためだけのものではありません。現場と採用が、同じ事実を見ながら意思決定するための共通言語にもなります。

要件定義を「依頼」から「共創」へ

ここが、今回最もお伝えしたいポイントです。


採用要件は、現場から依頼を受けて、採用担当者がそのまま求人票へ変換するものではありません。本来は、事業や組織に必要な役割を確認し、それを採用市場に照らしながら、現場と採用が一緒に設計していくものではないでしょうか。


現場は、どのような人材が必要なのかを知っています。採用担当者は、候補者や採用活動の特性を知っています。そこに市場データが加われば、要件定義は単なる意見調整ではなく、意思決定になります。
たとえば、ある条件をMustにすると対象市場が大きく狭くなることが分かったとします。そのとき重要なのは、その条件を機械的に外すことではありません。その条件を維持する価値が、採用難易度の上昇を上回るのかを判断することです。


採用スピードを優先するのか。即戦力性を優先するのか。報酬を上げるのか。入社後の育成を前提にするのか。どれが正解かは企業によって異なります。しかし、何も分からないまま決めることと、市場を理解したうえで決めることには大きな違いがあります。
現場の知見 × 採用担当者の経験 × 採用市場データ。 この3つを使って採用要件を設計することが、これからの採用ではより重要になると考えています。

求人より先に、市場を見る

ここまでの話を整理すると、変えたいのは採用活動の順番です。


一般的な採用では、現場の要望を聞き、要件を決め、求人票を作り、募集を始め、その後に市場の反応を見ながら改善していきます。つまり、まず社内で採用戦略を作り、その後に採用市場と向き合う流れです。


これを少しだけ前倒しします。現場から要望を聞いたら、すぐに求人票を書くのではなく、一度採用市場を見ます。求めている人材は市場にどれくらいいるのか。どの条件が採用難易度を上げているのか。同じ人材をどの企業と取り合っているのか。対象となる人材はどこにいるのか。そのうえで要件を設計し、求人票を作り、ターゲットやアプローチ方法を決めて採用活動を始めます。


求人を出してから市場を見るのではなく、市場を見てから求人を設計する。
この違いは小さく見えるかもしれません。しかし、採用の考え方としては大きな違いがあります。これまでは、採用活動を始めてから市場とのズレを発見し、修正していました。これからは、事前に市場とのズレを確認し、仮説を持って採用活動を始める。
採用を、事後改善型から事前設計型へ変えるということです。

「欲しい」と「採用できる」を両立させる

市場を見て採用を設計するという話をすると、採用要件を緩和することだと思われるかもしれません。しかし、そうではありません。現場が必要としている人材像は、採用戦略の出発点です。事業成長のために必要な経験やスキルを、単に採りやすさを理由に下げるべきではありません。


重要なのは、理想と市場を並べて見ることです。


たとえば5つのMust条件があり、そのすべてを満たす候補者が非常に少ないと分かったとします。そこで初めて、本当に5つすべてが入社時点で必要なのかを議論できます。3つは絶対に必要だが、残り2つは入社後に習得できるかもしれない。反対に、5つすべてがどうしても必要であれば、採用期間を長めに設定し、報酬や採用手法もそれに合わせる必要があります。


どちらも正しい判断になり得ます。違いは、採用市場を理解したうえで選択しているかどうかです。
市場を見る目的は、理想を諦めることではありません。理想を実現するために必要な難易度、時間、条件を理解することです。

採用市場を見る、3つの視点

では、市場から逆算して採用を考えるとき、具体的には何を見ればよいのでしょうか。私たちは大きく3つの視点で整理しています。

①Potential

その求人にどれくらい採用余地があるのかを見ます。現在の条件に該当する人材が市場にどの程度いるのか、どの条件によって市場が狭くなっているのかを確認します。経験年数や業界、スキルなどの条件を変えたときに対象市場がどのように変わるのかが分かれば、MustとWantの議論にも使えます。

②Advantage

対象人材が市場に存在していても、その人材を採りたい企業は自社だけではありません。そこで、同じ人材を募集している企業の求人と自社の求人を比較します。年収、働き方、仕事内容、役割、裁量、キャリア機会などを見ながら、自社は何で選ばれる可能性があるのかを考えます。

③Account

求める人材がどの企業に多く在籍しているのかを把握します。ダイレクトリクルーティングでは候補者を一人ずつ探すことが多いですが、対象人材が多く存在する企業が分かれば、どの企業を優先的に攻略するのかという視点を持つことができます。
整理すると、見るべきポイントはシンプルです。そもそも採れる市場なのか。その市場で選ばれるのか。そして、その人材はどこにいるのか。

重要なのは、3つの分析そのものではない

分析した結果として、要件を変える。求人票を変える。訴求を変える。ターゲットを変える。アプローチ方法を変える。データを見るために採用市場を見るのではなく、意思決定を変えるために採用市場を見ることが重要です。

市場を先に見れば、何が変わるか

ここで、冒頭の3か月以内に採用したいポジションに戻ってみます。


現場から求める経験やスキルを確認すると、かなり高い要件でした。これまでであれば、そのまま求人票を作り、採用活動を始めていたかもしれません。しかし、今回は最初に採用市場を確認してみます。


すると、すべての条件を満たす人材は想定より少ないことが分かりました。一方で、特定業界経験をMustからWantへ変更すると対象市場が大きく広がります。競合企業を見ると、報酬では自社より高い求人が多いものの、自社には役割の広さや事業への影響力という強みがありました。さらに対象人材の在籍企業を見ると、これまでターゲットとして想定していなかった企業群にも有望な人材が多くいることが分かりました。


この状態で現場との打ち合わせを行えば、会話は変わります。3か月以内の採用を優先するのであれば、一部の条件を変更する。条件を維持するのであれば、採用期間を長めに設定する。求人票では年収だけで競わず、役割や事業インパクトをより強く訴求する。ダイレクトリクルーティングでは、従来とは異なる企業群にもアプローチする。


最初から正解が分かるわけではありません。しかし、少なくとも出してみないと分からない状態から、仮説を持って始められる状態には変えられます。
これこそが、採用市場データから逆算して採用戦略を設計するということです。

採用担当者は「実行者」から「設計者」へ

採用市場を日常的に見られるようになると、採用担当者の役割も変わります。現場から依頼された条件を求人票へ落とし込み、媒体やエージェントへ展開するだけではなく、その要件が市場に対してどの程度現実的なのかを示し、採用戦略そのものを現場と一緒に設計する役割が強くなります。


採用難易度を感覚だけで伝えるのではなく、市場の情報を見せながら議論する。採用できない求人を受け取ってから頑張るのではなく、採用できる状態をつくるところから関わる。


これは、人事が事業により深く入り込むという意味でも重要です。採用担当者が単なる採用活動の実行者ではなく、事業に必要な人材をどのように獲得するのかを設計する存在になるからです。


そして、ここでも経験は不要になりません。むしろ逆です。データだけでは、事業や組織の事情までは分かりません。現場の知見、採用担当者の経験、そして採用市場データ。この3つを組み合わせることで、採用担当者の意思決定力そのものを高めることができます。

市場を見ることを、採用の標準に

一方で、ここまでの分析を求人が発生するたびに人手で行うのは現実的ではありません。対象人材の市場規模を確認し、競合求人を調べ、ターゲット企業を探し、それらを一つの判断材料として整理する。これを毎回手作業で行えば、それ自体に大きな工数がかかります。


だからこそ、採用市場を見ることを特別な調査ではなく、日常の採用プロセスに組み込める環境が必要になります。
XAION HRでは、Open Dataを活用し、外部の採用市場を捉えるためのデータ利用環境を提供しています。私たちが目指しているのは、単に人材データを検索するためのデータベースではありません。


求人を起点に、その求人にはどの程度の採用余地があるのか、どの条件が採用難易度に影響しているのか、どの企業と採用競争しているのか、自社求人にはどのような強みや改善余地があるのか、対象人材はどの企業に多く在籍しているのかを確認し、その結果を実際の採用戦略へつなげられる状態をつくることです。


Potentialで市場性を捉え、Advantageで競争力を確認し、Accountで攻略先を考える。その結果を使って、要件、JD、ターゲット、アクションを変えていく。データそのものを提供するだけではなく、求人を出す前の意思決定を変えることが、XAION HRで実現したいことです。

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その求人、本当に採用できますか?

採用には絶対的な正解はありません。候補者一人ひとりの意思決定は異なりますし、採用市場も競争環境も変化します。どれだけデータがあっても、採用結果を完全に予測することはできません。だからこそ、データだけで採用を決めるべきでもありません。


一方で、採用市場についてほとんど分からないまま求人を出すことと、市場を理解したうえで求人を出すことには大きな違いがあります。


求人を出して数か月経った後に、この条件では採れなかったと気づくのか。それとも、求人を出す前に市場を確認し、この条件では難しいと理解したうえで戦略を決めるのか。現場から提示された条件をそのまま求人票へ反映するのか。それとも、市場を見ながら、本当に必要な条件を一緒に設計するのか。


採用を、市場の反応を見てから改善する活動から、市場を見ながら事前に設計する活動へ変えていく。その最初の一歩は、とてもシンプルです。
求人票を作る前に、一度採用市場を見てみることです。


その求人、本当に採用できますか。
求人を出してから答えを探すのではなく、求人を出す前に、その可能性を考えてみる。私たちは、そこからこれからの採用戦略が始まると考えています。


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XAION DATA編集部

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